02


 灯台下暗し──
 その通りだ。言われてみれば、世の中それだけで出来ているような気さえする。多くのことは、気づかない内にすぐ近くで物事が進んでいるのが常だからだ。
 アバッキオの先輩にとっては、自ら教えた後輩が賄賂を受け取っていたことが、それだったのかもしれない。そして当時のアバッキオには、罪の意識の欠落が、該当した。
 大抵の裁判は、判決まで途方もなく長い年月がかかる。そういう覚悟をしていたというのに、入所までの道は、驚くほど早かった。

 刑務所というのは、罪と罰の最終到達地点だが、強制労働施設でも収容所でもない。社会ルールから逸脱した犯罪者、所謂“社会不適合者”を、ルールに沿って生活できるように“更生”するための援助施設だ。
 だからといって快適に暮らせるのはギャングの幹部くらいのもので、大していい場所でもなく、本来の目的も機能しているか定かではない。定員数を遥かに上回った収容で万年満員の過密刑務所では、自殺するものも数多くいる。
 定期的に報道許可を取ってあれやこれやとイメージアップを計っているが、入所する人間といえば、言ってしまえば束縛してまで更生が必要なあぶれ者ばかりなのだ。軒並み一癖も二癖もあり、ドブ川のような社会の裏を知っていて、公安が望むような馬鹿正直な顔をして大人しくルールに従う頭をしていたら、元からこんな場所へは入れられたりはしないだろう。
 何より、法を欺くことを楽しんでいるような空気を、市民でさえ持っているのだ。そんな反社会的連中が大半でも、別段不思議ではない。
 方言が全く異なるために、当然のように出身ごとの派閥が形成されていて、その中で上手く暮らせなければ村八分に合うし、下手を打つと出所してから返り討ちに遭う。数週間に一度のジェラート教室を楽しみにしながらも、一年に一度の恩赦と早い出所を望んで拳を耐えているだけで、出てしまえば元の木阿弥となる。人脈がないものが最も恐れるべきは、檻の中より檻の外だった。
 だからこそ、出所した時の気持ちは天涯孤独に等しい。出来る伝手といえば、どんなに賢くやろうと、所詮檻の中では泥のついたものにしか繋がらない。意識がなければ、どこにも居場所を失うだけで刑期を終える。
 アバッキオはそれを身をもって知っていた。

 出所の日程は伝えられていたはずだったが、両親はアバッキオのことを迎えには来なかった。アバッキオがそれを強く望んでいたからだ。
 アバッキオのプライドの高さを知る父が母を引き止めたに違いなく、また親の縁すら切り離そうとするアバッキオを、養護するように安易に手を貸せば、ますます心が折れていくと思ったのかもしれない。ありがたくもあり、故郷への執着が消えたのもその時だった。
 しかし、一人だけ無遠慮に追いかけてくる女がいた。以前のアバッキオを知る者は、忌むように記憶から消し去り、誰一人として関わり合いになろうとはしないというのに、一人だけ、アバッキオの背を引き止める女がいた。

「アバッキオさんは、バールに寄る時間も欠かしませんねぇ」
 タールのようなエスプレッソに、ミルクと砂糖をぼとぼとと入れたは、どろどろとしたそれをかき回しながらあっけらかんとして言った。昨日とは打って変わって、からっとして涼やかな空気に、澄んで穏やかな日が差している。往来の人の多さは相変わらずだ。
 灯台下暗し。この女もだった。いつの間にかアバッキオの近くに当たり前の如くついて回っている。それも今では悪い気がしなくなっている。
「あ?」
「いつも決まった時間にいるじゃないですか」
 カルボナーラを黙々と食べていたアバッキオへ、雑踏の音にかき消されないようにか、内緒話でもするようにが体を寄せた。
 それは頑固なアバッキオの日課だからなのだが、からすれば、日がなバールにいるように思えるのかもしれない。
「……なるほどな」
 赤ワインでパスタを飲み下しながら考えると、妙に納得した気持ちが込み上がってきた。
 生活するだけならば、ドナートのもとでやる一日の仕事で、十分に食べていける金を稼げていた。たまにブチャラティが伝手で頼まれた場所へ日雇いとして出かけることもあるが、そうでもしない限り働こうなどという気は少しも湧いてこない。一日、食いしのいでいければそれでよかった。
 労働などというのはそんなものだ。生きるために働くのであって、金のために働くのではない。生きるとは、金の量ではない。
 の間延びした声を反芻して、ふっ、と思わず鼻で笑ってしまった。要は暇なのだ。バール以外に行き場所がない。
 にそういうつもりはないのだろうが、指摘されてみると、改めてアバッキオは己の身の置き場所がないことを突きつけられたような気がした。

 出所した時から、居場所がなかったのだ。あてもなく歩きまわっている内に、バールに居座ることを覚えた。店主に迷惑な顔をされようが、睨みを効かせて、簡単な飲み物一杯でいつまでも座っていられた。
 居場所を求めて夜もふらふらと彷徨い歩けば、いずれ怪しげな店にも顔を出すようになる。下層の人間の格好の取り引きの場所であることは明らかで、ここに身を置いていると、法律などただの世間体に過ぎなかったのではないかと思い知る。人間の心の底側が、そこでは小麦袋を破いたように広がり、誰もそれを隠そうとはしていなかった。
 俺はこいつらにも劣っている──ふと頭を占めた感情に、追い打ちをかけられるようだった。
 賄賂を受け取りながらも己の傲慢にも気づかず、良心の皮を被っていい気になっていたアバッキオよりも、余程潔く見えたのだ。
 目的なんぞあるはずもない。あてのない罪悪感と、どこまでも底の見えない空虚と、有り余る時間だけをどうにかして浪費したかっただけだった。喧嘩を吹っかけられれば必ず返し、女に誘われれば抱いてやり、その時の感情に従って受け入れるまま受け入れてきた。暇を潰せるものには迷わず手を出した。
 ダイヤを盗んだのも、バールに寄るのと同じだ。暇を潰したと思えるから、無意識に歩み寄っている。そうしてそれがいつの間にか日課になっていく。
 だが最近はどうなのだろう。暇つぶしに寄るというよりも、バールを見ると立ち寄らなければならないという気がしてくる。
 が目の前に座ると、会いたいような気もした顔に思えてくる。
「てめーも大概暇だな」
 アバッキオがワインを飲み干して言うと、は黙りこんで、困ったように笑いながら頬を掻いた。
 普段何をしているのは知らないが、女なりに必死に、プランツォの時間を合わせているのかもしれなかった。


 この数ヶ月、アバッキオがやっていることといえば、ブチャラティかドナートの小間使いだ。
 一日の大半の時間が余っているというのに、心労だけは凄まじい。ギャングという人種そのものは気に食わないが、しかしその分だけ余計なことを考えずに済むので、組織に身を置くことにアバッキオは文句はなかった。
 不満があるとするなら仕事の内容だ。初めの内は新入りの顔見せとして出先に付き添うこともあったが、数週間も経てば鼻の垂れた子供でも出来る買い物係になる。
 組織にほどほどに理解のある一般人から雇った、ただの小遣い稼ぎの仲介役とは接触はあっても、余程機転の効く人間ではない限り、伝言役なんてのは勿論新入りには任されない。多くの組織の物事は、アバッキオの何も知らないところで起こり、また着々と解決されていく。

 ブチャラティの組織に関する補佐の殆どは、フーゴが受け持っていた。15歳の少年には卒がなかった。ギャングの世界に慣れきっていて、どこか普通の少年にはない風格さえあるように見えた。組織の中だけではない。エスカレーター式でぬくぬくと学校を上がってきたばかりのアバッキオよりも、フーゴはずっと社会というものを熟知しているように思えた。実際、そうなのだろう。少年は毎日忙しく走り回っている。
 リストランテの売上を管理しているのも、殆どフーゴだった。閉店すれば早速売上を計上し、ブチャラティが幹部へ報告をしやすいように事務所に保管をする。査定用に帳簿を誤魔化して、組織の息のかかった仕入先への手回しも忘れない。ブチャラティはそれを見て、後は雇ったシェフと店の内装だとかメニューの話を進めるだけでいい。
 何事も上手くいくように裏金の工面をし、1リラたりとも己の懐へ入れることなく、ブチャラティへ引き渡しているのもフーゴだ。金になることを嗅ぎつけるのが早く、ブチャラティはフーゴを帳簿代わりにしているフシがある。
 先日などは、地方にアメリカからの観光ブームが起こったと聞きつけて、ブチャラティに視察のための旅費をせがんだほどだ。大方、土地が良ければ不動産を装って、無知な観光客から手付金をたっぷりと巻き上げてくる気だったのだろう。
「悪くはないが、優先事項が出来たからな……」
 ポルポからの指令が来ている、とその時既に今回のフラヴィオの件を抱えていたらしいブチャラティから告げられたフーゴは、
「それは残念です」
と幾らか惜しそうに肩をすくめていた。少年の頭の中では、詐欺で得た金を洗浄するところまで想像を終えていたのだろう。あるいはそれを新しい事業の元手にするつもりだったのかもしれなかった。
 そういった少年の提言で、ブチャラティが大きな金になりそうだと思えば、すかさずポルポへ報告をするので、上納金が滞るばかりか年々増えていっているらしい。元から聡明で組織へ献身的なブチャラティへ、ポルポが寄せる信頼もまた上がっていく。
 その他何をやらせても大抵のことは想定内で収めてくるため、フーゴは大いに側近の素質があった。少年がいる限り、ブチャラティは裏金に困る様子もない。下っ端にしかなり得ない若年ばかりのチームでも、フーゴという少年の使い道を、ブチャラティはよく心得ている。
 どこそこの店を手伝えとでも指示をされない限り働きもせず、いつものたりくたりと使いで歩きまわり、朝も昼も夜も時間さえあればバールに居座っているアバッキオとは大違いだ。
 少年に引き換え、アバッキオが組織で活かせるものといえば雀の涙ほどもない。パトロールで鍛えた運転と、警察学校でさんざ訓練させられたピストルの手入れ、ドナートには不評の体術と、元来の反骨な性分だ。
 アバッキオが“ギャング”という職に持ち込んできたそれらが、一体どれほどの役に立つというのか。自分ですら使い道に苦労しているところだ。
 ここで役に立つのは技能ではなかった。“信頼”だ。技能は効率よく使われなければならないが、組織に入っておきながら持ち腐れているような人間などは、二心あるのではないかと遠ざけられ、いつしか捨て駒として使われるのが関の山なのだ。
 それが不満で寝返れば、倉庫の椅子の上。麻袋の中。はたまた豚の餌。ドナートの元で行われていることが、全て降りかかる。技能はどこへ行っても平等に評価されるのだから、それだけ寝返る決意を軽くする。
 それよりならば、社会で息をする以外到底使い道がないと弾かれてきたようなどうしようもない鳥頭の方が、腹に一物を隠したエリートよりも余程側に置いていられたのだろう。
 ここでは技能などというのはただの付属品だった。下っ端などはたまに有能な人材を引きぬく以外、多くは組織に従順な兵士でありさえすれば問題はない。
 しかしその点において、アバッキオは落第者だった。フーゴのように能力の使いどころを心得てもおらず、ナランチャのように純然と従えもせず、そればかりか入ったばかりのミスタにさえ出遅れているような気がする。
 だからいつまでたっても、こんなつまらない使いばかりをさせられるのだろう。

「差し入れだ」
 狭い階段を最上階まで上り、ドアをこじ開けるようにして中に入り、そうしてようやくいつも連絡に使っている古びた店の、薄っぺらい紙袋をミスタへ渡した。
 男は「グラッツェ!」と嬉しげな顔を見せた後乱暴に袋を漁ったが、中身を確認すると真っ青になり、すぐにアバッキオへ不満気な眼差しを向けた。
「ぜ、全部缶詰じゃねーか! 小便も我慢してやってる見張りに対しての嫌がらせかよ……!」
「俺じゃあねーよ、適当でいいっつったら、店の親父がそれを突っ込んだんだろ」
「そりゃああんたの責任だろォ~?」
 ミスタが缶詰を抱きしめてしくしくと泣き真似を始めたのを、アバッキオは無言で返した。よくもまあ元気なもんだ、と呆れつつもタフな男に感心する。この部屋での缶詰状態は、とっくに10日を過ぎている。
 アパルトメントは各階に階段を挟んで二部屋ずつ配置されているが、最上階だけは片側に一部屋で、向かえに屋上がある。最上階は物置として設計されたため、天井も低く階下より狭い間取りになっているせいで、男二人が入ればもう息苦しい。
 ガスも水道さえもなく、トイレは一階まで借りに行かなければならない。シャワーは屋外の蛇口を使う。ここがミラノならば、冬には死んでいるところだ。
 長所と言える長所は、辛うじて電気は通っていることと、埃臭いがネズミが出ないというだけだった。あまりの条件に借り手もなく、長い間放置されていたおかげで、すっかり廃墟の体を成している。
 そんな部屋の片隅に、男は機材とともにギュウギュウに押し込まれていた。電気があると言っても複数のモニターを稼働させる電力すら乏しいので、どんどん持ち込む機材も増えていく。男のスペースも狭くなる一方だ。
 更に悪いことに、モニターから目を離せるのはアバッキオやブチャラティが様子見に来た時だけで、いくら急な用便でも、トイレに行くことすらままならない。
 ミスタは、
「小便は窓からするからいい」
などと言っているが、そんなことを続けていたら、いずれ大家が飛び込んでくることになるだろう。
 そうすると、ミスタの楽しみといえば食料だけになってしまうらしい。

「目の前に海があるのに、ボソボソした缶詰を食べるのかァ俺は……」
 一時の休憩を済ませると、缶詰で物悲しくタワーを作ったミスタは、これみよがしにため息を付いて肩を落とした。
「すまねぇな。次はオリーブ漬けでも入れて貰う」
「それだけで何が食えるってんだ」
 じとりと睨む視線を躱して、アバッキオは真顔を向ける。
「次の日にパスタでも買ってきてやるか?」
「あー、よろしくな。鍋と塩と胡椒も……あともうちょっとデカいフォークもあるといい」
「調理用の水とコンロも持ってきてやるよ」
「皿とコップはこの缶詰の空でいいな」
 アバッキオは腰に手を当てた。
「一日一つとして……全部揃うのは一週間後だな」
「ったくふざけてやがる!」
 叫んだミスタは無造作に缶詰を開けて、魚へ胡椒をドサドサとかけた。プラスチックフォークで乱暴にかき回してかっ込むように頬張るのを見ていると、「そういえばよ」とくぐもった声でミスタが言った。
「ここ数日、大家に妙な噂を立てられてるみたいなんだけどよ」
「……勘づかれたのか?」
 監視用の機材を運び込んだのはブチャラティだ。ミスタが貧乏学生を装っていなくとも、大量のモニターに囲まれていれば誰が見ても怪しい。手は打ってあると言っていたのだから、男の言うことは確実であるように思えたが、どこかの段階で漏れることもあるのかもしれない。
 僅かに張り詰めた空気に、ミスタは首を振った。しかし飛び出した言葉は、アバッキオには予想外だった。
「ホモ」
「あ゛?」
 思わず大きな声が出る。
「わかるかァ? ホモってのはよォー、野郎同士で……」
「うるせぇな、ンなことはわかってんだよ!」
 そんなことを一々説明されないでも分かる。大家の勘違いとやらに、アバッキオの思考が結びつかないのだ。
 話を続けるミスタは、缶詰の底に溜まった魚の身を、フォークでガリガリと無心にかき集めている。
「誰も借りたがらねぇ部屋を借りたと思ったら、男が男の元によぉ、毎日飽きもせず通ってくるんだ。何か変だな~って思うだろ?」
 そう言ってから、ミスタは若干縋るような目で、アバッキオへおずおずと尋ねた。
「入居するときに“引きこもりの弟の世話を見てます~”って、ちゃんと言ってくれたよな……?」
「……」
 一週間以上前の記憶を探ってみる。どうでもいいことだったのでおぼろげだが、そういえばミスタに付き添っていたアバッキオへ、大家はどこか不可解な顔をして見ていたような気もする。
「……言ってねぇな」
 そういや。アバッキオは小さく零した。
「忘れてた」
「勘弁してくれよーー、マジで! トイレ行くたびに変な目で見られるんだぜ?!」
「ああ分かった。後で訂正しておいてやるよ」
 面倒になって適当に返事をする。踵を返した後の足取りは早い。
 戸口へ向かう足音に、ミスタは焦りながら「本当かよ」と疑わしげにアバッキオを引き止めた。
「早く女に会いたいからって、適当なこと言ってんじゃねーだろうな!」
 踏みしめたつま先が張り付いて、ミシリと板を軋ませた。どうしてそこで、女が出てくる。アバッキオは振り返ってミスタを睨んだ。怒りを顕にしていたはずだった。
 しかし狭苦しい窓際では、したり顔を浮かべた男が、アバッキオへ向かって缶詰を掲げ、乾杯の動作をしている。
 一杯食わされたと気づいた時には、「ケケケ」などと押し殺した笑い声を漏らしながら、ミスタの視線はモニターへ移っていた。

 一歩踏むたびに大袈裟に軋む階段を、慎重すぎるほどにゆっくり降りる。
 天井近くに取り付けられた窓は、古いガラスなのか、クモの巣だらけで黄ばんでいる。それでも段差の一段一段を照らす光は、磨かれた窓よりも淡く柔らかい。
 ああそうだ──とアバッキオは、扉の向こうのミスタへ、胸の内で強く返した。自棄になっていた。
 女だ。に会いたいのだ。日照りの下でエスプレッソの香りを漂わせて、なんとも不味そうな顔をして飲む、あの顔に会いたいのだ。気づけばそんなことばかり考えている。日が高くなると時間が気になって、時計に目が引き寄せられるようになっている。
 何を知らなくとも構わなかった。いや、何も知らないからこそ良いと思えた。アバッキオにとってはバールの女で、にとってもアバッキオは、恩人などではなくバールの男であればいいと、どこかで望んでいる。
 たとえ過去のアバッキオを知っていようと、は余計な詮索をしてこないではないか。それがあの空間には心地いい。だからアバッキオはきっと、無理に追い返しはしなかったのだ。

 一階の管理人室を通り過ぎる時、ちらりと中を窺うと、カップやら雑誌やらが散乱する机の上にマリア像が見えた。
 ふと視線を感じて顔を向ける。裏口から白髪交じりの老婆が、確かに訝しげにアバッキオの様子を窺っている。
 こいつはミスタが追い出される前に、弁解しておいた方がいいかもしれぇな──
 アバッキオは思い直して、戸口へ目を向けた。磨りガラスの小さな窓から溢れる光の中を、埃が金粉のように舞っている。
 鈍い空気の震えが起きた。近くの教会で、鐘をついたらしい。振動に導かれるようにして外に出ると、強い日に視界が白く飛んだ。
 目陰をさしながら時計を確認すれば、12時はとっくに過ぎている。また、バイトが昼寝でもしていたに違いない。
 石畳を蹴る歩幅が大きくなった。



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13/09/11 長編